波多康治会計事務所

神奈川県、横須賀市の波多会計事務所は、面倒見の良さが定評。
新規開業、記帳代行、パソコン指導、相続手続、公認会計士業務等を承ります。

税務に関するQ&A

波多康治会計事務所 〒238-0042
横須賀市汐入町2-6

電話 046-822-6420(代表)
FAX 046-826-3005

Koji Hata Accounting Office

自己株式の買取と株式の評価 2015.07.01

特定の株主から当社の株を買い取ってほしいという申出があります。当社の株式の発行価額は一株1万円でしたが、直近事業年度末の一株当たりの帳簿価額は数倍の金額になっています。しかし、ここ数年は業績が低迷しており、赤字で配当もしていません。このような場合、どのように対応したらいいのでしょうか。当社が株を買い取るとした場合、どのくらいで買い取る必要がありますか。当社としては、仮に買い取るにしても、一株1万円以上出すつもりはありません。

1)会社が自己株式を買い取る場合は、いくつかの法律的な縛りがありますので、それを理解しておかなければなりません。まず、財源規制と言われるものがあります。御社の場合、一株当たりの帳簿価額は数倍になっているとのことですから、問題ありませんが、貸借対照表の純資産の金額が資本金の金額を下回っているような会社の場合は、原則として自己株式の取得はできません。これは会社法上、自己株式の取得を配当と同様に考えているためで、配当財源がないような場合は、自己株式の取得もできない扱いとなっています。なお、このような場合でも、会社が無償で自己株式を取得するような場合は問題ありません。また、無償で自己株式を取得する場合は、次のような株主総会等の決議も不要です。
特定の株主から会社が自己株式を取得するには、株主総会で特別決議、つまり議決権を持つ株主の過半数を定足数とし、特定の株主を除く3分の2以上の賛成が必要になります。
それからもう一つ重要な点は、会社法が、株主平等の原則から、他の株主にも同様に会社に株式を買い取ってもらう権利を付与していることです。会社は、株主総会前に、他の株主にも特定の株主と同様な条件を通知し、売却できる権利を与えなければなりません。(会社法第160条第2,3項)

2)株式の価額(時価)については、状況によって色々な方法があるといっても過言ではありません。ただ、税務上は、相続や贈与で使う評価の仕方があります。会社の規模を一定の方法で算定し、類似業種比準方式と純資産価額方式という二つの方法の併用で算定します。本件の場合も、一応、これを目安に株価の算定をしたらいいと思います。当然、貸借対照表上の一株当たりの帳簿価額とは違った金額になります。
仮にその金額が一株2万円だとします。それを1万円で会社が買い取って税務上問題ないかということがあります。つまり、それだけ会社が得をするのだから、利益を得ていると税務上扱われないかということです。この点については、自己株式の取得は損益取引ではなく資本取引なので、差額について税務署が利益を認定することはないというのが通説です。